
エンジニアに握られるビジネスの現実と、そこから得た教訓
僕はこれまでに複数の事業を立ち上げてきましたが、その過程で強烈に実感したことがあります。
それは、現代のビジネスはITエンジニアに「実効支配」されているという現実です。
もちろん、アイデアや営業力、資金調達なども大切ですが、最終的に事業を動かすのはシステムであり、そのシステムを動かすのはエンジニアです。言い換えれば、「優秀なエンジニアを獲得できるかどうか」で事業の命運が決まる時代に突入していると感じています。
実体験から痛感した「生殺与奪を握られる」感覚
実は僕にとって今回が3度目の事業挑戦です。
1度目の事業は、ある意味で最も大きな挫折となりました。
当時、僕は5000名規模のコワーキングスペースのフランチャイズに加盟し、事業を展開していました。しかし、役員による背任行為によって事業が大崩壊。他店舗では信頼関係は一瞬で崩れ、事業基盤は音を立てて崩れていきました。
何とか自分の店舗だけは事業を再起しようと試みました。けれどもそこで待っていたのは「エンジニアに生殺与奪を握られる」現実でした。
エラーひとつ直せない、システムが止まれば終わり
ビジネスの多くは今やITシステムに依存しています。
顧客管理、決済、予約、会員サイト……。そのどれか一つでも止まれば、サービスは成り立ちません。
僕が直面したのはまさにその現実でした。
ある日、システムに致命的なエラーが発生しました。しかし僕自身はプログラムを直せるだけのスキルを持っていなかった。保守・運用費を払い続けられる余裕もなく、頼みたくても頼めない。結果、サービスを継続できなくなる寸前まで追い込まれました。
その時、強烈に思い知らされたのです。
「エンジニアがいなければ、ビジネスは一瞬で止まる」ということを。

依頼できないなら、自分でやるしかない
そこから僕の発想は変わりました。
「頼めないなら、自分でやるしかない」と。
資金が潤沢にあるわけでもないスタートアップにとって、外注や雇用は常にリスクを伴います。だからこそ、自分で最低限のことを理解し、修正し、改善できる力を持つ必要があると痛感しました。
それが今の僕の原点です。
現代ビジネスの本質:「エンジニアリング力」こそ競争力
この経験から僕は、現代のビジネスにおける本質をこう捉えるようになりました。
「エンジニアリング力」こそが最大の競争力である。
どれほど優れたビジネスモデルを描いても、システムを実装できなければただの絵に描いた餅です。逆に、小さなアイデアでも実装し続けられる力があれば、事業は息を吹き返す。
優秀なエンジニアを採用できるかどうかはもちろん大事ですが、それ以上に「自らも最低限のエンジニアリング力を持つ」ことが、これからの起業家やビジネスパーソンには不可欠だと考えています。
自分で手を動かせる人が生き残る
僕がこれまでの挑戦を通じて得た教訓をまとめると、次のようになります。
- ビジネスはエンジニアに実効支配されている
- システムダウンやエラーは事業の存続に直結する
- 外注や雇用に頼りきるのは危険
- 自らも手を動かせる最低限のスキルを持つことが重要
つまり、「自分で手を動かせる人」が最終的に生き残るのです。
僕自身、苦い失敗や挫折を経てこの現実に気づきました。だからこそ今、学び直し、挑戦を続けています。
これからの時代を生き抜くために必要なのは、単なる経営スキルや営業力ではなく、「自ら実装し、事業を止めない力」。
この力を持つ者だけが、本当の意味で事業をコントロールできるのだと思います。
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